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2018.8.10 / 17:47

『夢工場ラムレス』について

written by 河邉 徹

最近家のまわりで、よく同じ柄の蝶々を見かけます。

黄色の柄の羽で、きっと同じ蝶なのかなと思います。

しかしそれは似た色なだけで「最近よく会いますね」と話しかけてみると、全然違う蝶の可能性もあります。

人違いならぬ蝶違いです。

蝶というのは、ずっと同じ場所に留まって暮らしているものなのでしょうか。

いや、本当に話しかけないですよ。

さて、8月17日より小説『流星コーリング』の連載が始まりますが、その前に今一度『夢工場ラムレス』の話をしようと思います。

書いた経緯などはこれまでも話したことがあると思うので、今回は内容に触れながら、書いた時の裏話、そしていただいた感想なども含めて話をしようかなと思います。

しかし、そうしたことの多くは作家にとっての自己満足のようなもので、そんなに知りたくもなかったのに、と思うようなこともあるかもしれません。

それでも、今回のブログは一部の興味のある方に楽しんで貰えたらと思って書きます。

ということで今回は、『夢工場ラムレス』のネタバレを多分に含みますので、まだ小説を読んでいない方は、そちらを先に読んでもらえると幸いです。

『夢工場ラムレス』は夢が題材になっている小説です。構想を考えている時から、僕の中で、物語を複数の章に分けて書きたいという思いはありました。

それには色んな理由があります。

そうすることで、夢工場の様々な側面を描けたり、色んな人にとっての夢工場を描けると思いました。

読んでいても、ちょっと謎を解いていくような楽しみもあるかなと。

あとは、初めて小説を書くということで、一人の主人公で長編を書く自信がなかったというのもあります。

小説を書くことにおいて、自信というものは作家に大きく影響すると思います。その話は後ほどしますね。

まず一章目、「未来の夢」について。

僕が正真正銘、初めて書いた物語で、思い入れがあります。

健人くんと葵ちゃんの話ですね。

大学生、音楽サークルというところで、自分の経験と重なることが多く、その辺の暮らしは描きやすいところでした。

大学が始まり、履修登録をしたり、サークルの新歓に参加したり。

あの頃の空気というのは、今も自分の中で、みずみずしい青春の時間として存在していて、この章ではその一部を形にしたいなと思いました。

二人の関係や会話は、できるだけ柔らかいタッチで描くことを意識しました。

また、恋愛の要素があることで、物語の導入になりやすいかなとも。

そして、この章の内容を思い浮かべている時に、主人公の夢に「未来」の性質があることを思い、そこから「未来の夢」、次に「過去の夢」という章を書こうと思いました。

最後に「管理人の夢」を書きたいというのも、もうその頃には決まっていました。

二章目は「過去の夢」です。

女性の職場で、そこに登場する人たちを生き生きと描きたいと思いました。この章に出てくる人たち、みんな好きなんですよね。雅子さんもいいキャラしてます。

それから僕自身、上京するまで一緒に暮らしていた祖母がいて、その思い出から物語を書けたらと思いました。そして不思議と、この章を書いている時は、祖母の夢をよく見ました。

この章の話は、僕自身の願いでもあったのかなと思います。誰にだって、もう会えない人への願いや思いは、多かれ少なかれあるものですよね。

そういえば『夢工場ラムレス』を読んで、夢をよく見るようになったという話をしてくれる方もいました。書いている僕も、やはり意識がそこにいくからか、執筆中はかなりの頻度で様々な夢を見ていました。もちろん明晰夢も。

ちなみにですが、麻美ちゃんは夢工場に行く前の、眠りに落ちる前にメモ用紙に絵を描いています(88ページ)。その絵は物語の中で何度かこっそり登場していますので、興味があれば見つけてみてください。

三章目は「理想の夢」です。

夢工場がもたらす結果は、いいことだけじゃない。そんなことを書きたくて書きました。

意外とこの章は人気で、僕もこういう終わり方は好きなんですよね。現実の世界と夢の世界って、紙一重だと思いませんか。水槽の脳みたいな。

人は誰にでも欲はあるもので、そういう意味で、加藤は本当に悪い人じゃない感もあります。

でも、本当の本当に悪いやつっていうのは、書くのが逆に難しいと思うんですよね。大体の悪い人には、どこかに必ずいいところや、そうした行動をとる理由があるものですから。

またいつか、別の物語では、本当に悪い人物も描けたらなと思います。

あと僕は本を読んでいて、知らない世界の仕事の話は、とりあえず興味が惹かれます。どんな暮らししてるんだろう、どんな悩みがあるんだろう、と知識欲もくすぐられます。

そういう意味でも、この三章のネットTVの世界のことなど、僕だから知っていることや見たものを書いて、読者の方にとっての知識や経験になれたら幸いです。(もちろんストーリーはフィクションですよ)

四章目は「他人の夢」です。

未来の夢、過去の夢、理想の夢、そして最後は管理人の夢。

そこまでは書くことが決まっていましたが、何か足りないと思い、もう一つ話を書こうと思っていました。

その結果この章は、物語を最後の章へ進めるための、なくてはならない章になりました。マサキくんは、キーパーソンですね。

個人的にはAKサーブがだんだん成長していくのとか、好きなんですよね。

この章の終わり方も、いろんな捉え方があっていいと思いますが、208ページの冒頭から、なんだか変です。自分の部屋にないはずの辞書があったり、「メイセキム」とカタカナで検索がヒットしたり、不自然な点が幾つかあります。

なのでここの部分から、彼は明晰夢ではない、つまり夢だと気がつかない夢を見ていると考えられます。

彼は、夢の修復をしたことで、明晰夢を見なくなったんですね。

それからどの章も共通して、冒頭は夢の中から始まっています。

この形は揃えたかったんですよね。

この四章の冒頭は、心の内側を見る、マサキくんならではの夢ですね。

五章目は最後の章、「管理人の夢」です。

さっき書いたように、最後に管理人の視点で話を終わらせる計画は、結構初期段階でありました。

どんな人物像かなどは、まだ決まっていませんでしたが、僕はできるだけ、その正体は普通の人がいいなと思っていました。

第四章までの中で、様々な登場人物がいて、それぞれの悩みや解決したいことがありました。

そんな中で、特別な存在、超越した存在として登場した管理人も、本当はとても普通の暮らしをしていて、どうにもならないような悩みを抱えているということを描きたかったのです。

きっと現実の世界もそうです。何かを羨ましいと思うようなことがあっても、それはその人の一面にすぎません。

ちなみに気づかないまま読み終えてもらえたら、それが嬉しいですが、実はここまでの章が三人称。そして最後の物語だけが一人称で描かれています。つまり五章目だけが地の文で「私」と自分を呼んでいます。

誰も五章の主人公の名前を呼ぶことなく、最後の部分まで読んでもらえたらという工夫でした。ちょっとしたトリックですが、意外と気がつかないものじゃないですか?

そしてこれも余談ですが、彼女が最初に夢工場ラムレスに行く時、青い扉にはレモン型のプレートがかけられていました。管理人の好きなものに変えられるということでしたので、きっとおじさんはレモンが好きだったのでしょう。そして、この五章の主人公は赤い風船のプレートにしています。

それはきっと、少し前に彼女が観た、「あの風船に祈りを」というアニメ映画の影響ですね。

歌詞もそうですが、小説も色んな解釈があっていいと思います。

僕が全く意図しなかった感想をもらうこともあります。

例えば、「この小説を読んでから、寝つきやすくなった」と言ってもらうこともありましたが、それってすごいことだと思いました。僕の想像もしなかったカタチで、影響を受けてもらえるなんて、本当に素敵だなと思います。

出版社の方に言われたのが、この小説はファンタジーの要素があるけれど、どこかで会ったことのあるような人がたくさんいる、ということでした。

だからこの本を読んでくれた人が、どこか自分や周りと似ている人がいて、 誰かと共感してもらえたら嬉しいです。

冒頭に自信の話をしましたが、僕は最初、小説を最後まで書き上げても、なかなか人に見せることができませんでした。自分では面白いと思うけれど、面白くないと言われたらどうしよう、と不安になりました。テンションが低い時に読むと、自分でも面白くなく感じることもあります。

それから友人や出版社の方に読んでもらって、感想をもらったりして、そうしたことが力になり、自信になって、一つの本にすることができました。

小説も正解のない世界です。自分が面白いと思ったものへの追求です。

だから、本当の最初は、迷うこともあります。

面白いのかな、ということはもちろん、書ききれるのかな、ということもです。

でも僕はそうした友人や出版社の方に支えられ、一番最初に乗り越えなければいけないところは乗り越えることができたように思います。

そうやって一冊書き上げると、また違う世界が見えるようになってきました。少なくとも、書ききれるかな、という不安はもうありません。

もちろんこれから、幾つも新しい壁が現れると思いますが、楽しんで研究して、物語を追求していこうと思います。

8月17日から、hontoで次作の『流星コーリング』の連載が始まります。

アプリで僕も第一回分を読みましたが、縦書きで文字も非常に読みやすいです。

初めてそうした形で本を読む方も多いと思いますが、きっとストレスなく楽しんで読んでもらえると思います。

僕は今、早く新しい小説をみんなに読んでほしくてたまりません。

僕が作る作品が、あなたの明日も生きていこうという力になれればと思います。

どうか、これからもよろしくお願いします。

思いついたことをいろいろ書いてみました。

ここまで、長い文章を読んでくださってありがとうございました。

ではまた◎

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